手嶋毅の展覧会案内

 
手嶋毅 365日のパピエ・コレ展
会期:
2016年4月11日(月)から16日(土)
12:00〜19:00(最終日17:00まで)
会場:
表参道画廊+Musée F
http://www.omotesando-garo.com/home.html
150-0001東京都渋谷区神宮前4-17-3アーク・アトリウムB02
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展覧会によせて
 「パピエ・コレ(Papiers-Collés)」は「貼付けられた紙」。その呼び方は、ポール・セザンヌやアンリ・マティスの影響を受けたジュルジュ・ブラックとパビロ・ピカソのキュビズムの頃に溯る。多視点で、描く対象を徹底的に分解するキュビズム絵画は、1912年頃に、日常に存在する新聞紙、包装紙等の紙の一部を油彩の画面に貼込む「パピエ・コレ」により、対象の具象性からかけ離れてしまった表現に一片のリアリティを持ち込むことで新規なテクスチャー獲得し、新たな変容と表現を生むことになった。この「パピエ・コレ」による異物の組合せの概念は、ダダやシュールレアリスム運動の中で、「コラージュ」「アサンブラージュ」「モンタージュ」と実存しない意想外の虚構空間を創造する手法として平面だけでなく立体作品をも生み出すことになった。一方、その後、ピカソが「ゲルニカ」を描いている1937年頃に、ピカソの12歳年上であるアンリ・マティスは、自身の後半生で「紙」だけによって、純粋に「色と形」による新しい表現を見出しつつあった。これはピカソ等が始めた目的とは異なったものであったが、「パピエ・コレ」である。ガッシュで塗られた紙をハサミで切り、「紙に糊付する切り紙絵(Cut-Outs)」といわれている。 それは彼独自の手法として発展し、彼が73歳頃からは、色彩を直に扱い、その色の純化と形の単純化によって構成された表現は、「線画と彩色画との間の大きな隔たり」という従来抱えていた葛藤を解消し、今までを総括する輝かしい創造の喜びに浸っていくことになる。
 私にとっての「パピエ・コレ」は、30年程前になり、1986年に「A DAY A COLLAGE」(アトリウム)という展覧会をしている。その時は、雑誌等の印刷物を切り取って「パピエ・コレ(コラージュ)」をして、その上に直感的にドローイングするのを日々楽しんだものだった。   
 今回は、「色と形と手描き」の組み合わせの楽しみ、それに一年間という継続する時間軸を加えて制作した。毎日の午前中を制作の時間とし、一日一日が新しく感じられ、刺激的であり緊張もあった。高村光太郎は指先が僅かな起伏に気づき、「嗅覚は鼻の粘膜の触覚による」と言い、「色彩が触覚でなかったら(絵画の)画面は永久にぺちゃんことなるだろう、人間の五官は殆ど全く触覚に統一される」と語っている。そう、制作をしている時に、私もこの「触覚」を感じることがあった。私にとっても「パピエ・コレ」の制作は、ドローイングした紙片や色紙を「触覚」で色と形を感じながら、「色を活け」「形を活け」た。それが、制作された作品の色と形が立体化しているようにも感じられる所以だろうか。
  一日毎の「パピエ・コレ」は、一日しか存在しないエフェメラとも言えるが、一つの作品である。また、それらが纏まった各月毎、さらには 365日の「パピエ・コレ」 アーカイブは、私の感性と触覚によって創造された一つのシリーズ作品でもある。これは、私のユニバース「宙」になった。
 その「宙」を、作品を額に入れて展示、手製版の各月毎の冊子体、そして映像展示で見ていただくことを考えている。
                                                                                                                2016年1月 手嶋毅






http://www.omotesando-garo.com/home.htmlshapeimage_2_link_0